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フレンドシップ


図々しい大人
仕事で静岡へ行った帰りの新幹線。6?7歳ぐらいの女の子を連れた白髪の女性と隣り合わせになった。女の子はたぶん彼女のお孫さんだろう。旅行だろうか。それとも田舎に遊びに来た孫を送り届けるところだろうか。僕はなんとなく優しい気分になって、二人を見つめていた。

でもなんだか様子がおかしい。静岡から名古屋までの約1時間の間、二人の間にはほとんどコミュニケーションがないのだ。女の子はずっとお婆さんの存在を無視するようにDSをやり続けている。お婆さんは虚ろなまなざしで、ぼんやりと前方を見ている。

女の子がゲームに熱中しているのかというとそんな感じでもない。どちらかというと手持ち無沙汰で仕方なくやっているようで、目に輝きが見られない。周りの空気を拒絶するようにDSを顔の前に近づけ、だらだらとペンを走らせている。

お婆さんは時々、何か言いたげに隣を見る。しかし結局何も言わずにまた前を向いて、視線を宙に漂わせる。車内販売がやって来るとアイスクリームを買って、女の子の前に置く。しかし女の子はそれに見向きもしない。相変わらずDSをやり続けている。

「そんなに近くで画面見たら、目が悪くなっちゃうよ」「アイスクリーム、溶けないうちに一緒に食べようか」思わずそんなふうに声をかけたくなったが、お婆さんを差し置いてそんなことをできるはずもない。僕たちの間にはどんよりした空気が停滞し続ける。

新幹線はそんな乗客を乗せながら、黙々と走り続ける。数十分が過ぎただろうか、名古屋駅が近づき僕が席を立ったときに、ようやくお婆さんがアイスクリームに手をかけた。僕は続きを見たかったけど、乗り越すわけにもいかず、後ろ髪を引かれる思いで新幹線を降りた。

*   *   *

もしかしたら二人が会ったのは久しぶりだったのかもしれない。だから女の子は殻に閉じこもり、お婆さんは遠慮していたのだろう。そんなふうにも思ったが、よくよく考えてみると、あんなふうによそよそしくしている親子連れを最近よく見かける気がする。

僕が子供の頃、大人は子供に対してとても図々しくて無遠慮だった。両親や祖父母にかぎらず、近所のおばさんも、久しぶりに会う親戚のおじさんも、子供の都合はおかまいなしに話しかけ、僕たちが張り巡らしているバリアを事もなげに乗り越えてきた。

それはたいてい疎ましくて迷惑だったけど、考えてみれば、そんなふうにしてもらえたおかげで、僕たちは孤独を感じずに済んだのかもしれない。そうしなくては大人と子供はつきあえないということを、その頃の大人はなんとなくわかっていたのかもしれない。

*   *   *

大人と子供の間にはいつの時代にも深いジェネレーションギャップが横たわっている。それを飛び越えてコミュニケーションをとるためには、大人が無遠慮にふるまうのが一番なのかもしれない。欲しくないという子供の口に、溶けたらもったいないからと言いながらアイスクリームを押し込む。子供たちに必要なのはそんな図々しい大人なのかもしれない。

二人はちゃんと一緒にアイスクリームを食べられただろうか。少しは話ができただろうか。もしそうでなくても、二人にとって楽しい旅になったのならよいのだけど。

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