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デビッド・ボウイ
学生時代に、ケイジさんという2つ上の先輩に誘われてビートルズのコピーバンドに入った。ケイジさんは熱狂的なビートルズ信者で、当時まだビートルズをほとんど聴いたことがなかった僕にビートルズの魅力を教えてくれた人だ。ケイジさんの部屋で、海賊版を含めて100枚以上もあったビートルズコレクションを聴かせてもらううちに、僕はすっかり洗脳された。自分でもビートルズのレコードを買いあさり、聴きあさった。ケイジさんがいなかったら僕はビートルズを知らないままだったかもしれないし、ビートルズを通して知った黒人音楽にも出会えなかったかもしれない。そのときには気づいていなかったが、ケイジさんは僕の音楽人生における大恩人なのだ。

そんなケイジさんがこよなく愛していたもう一人のアーティストがデビッドボウイだった。ビートルズ布教に成功した彼は、次にボウイの素晴らしさも伝えようと試みたが、今度はうまくいかなかった。僕がほとんど興味を示さなかったからだ。僕は、当時流行っていた「レッツダンス」「チャイナガール」「ブルージーン」といった80年代の象徴みたいな音楽がボウイだと思っていたし、なによりもビートルズに夢中だった。彼は人に無理強いするタイプの人ではなかったから、僕にそれ以上ボウイを勧めることはなかった。いま思えば、それが僕がデビッドボウイに触れる唯一の、そして最大のチャンスだった。僕は貴重な機会を逃し、デビッドボウイを知らないまま大人になった。

*   *   *

それから30年近く経ったある日、たまたまテレビで「ZIGGY STARDUST」の特集番組を見た。アルバムを通して、当時のデビッドボウイの音楽と生き様が紹介されていた。それは僕が知っている80年代の彼と彼の音楽とは全く違っていた。なんてカッコイイんだろう。なんて歌が上手いんだろう。なんて美しい曲なんだろう。これがデビッドボウイだったのか…。折しも学生時代以来途絶えていたアナログオーディオブームが再燃し、聴き逃していた名盤を物色していた真っ最中。すぐにヤフオクで中古レコードを探して手に入れた。
美しい旋律とアレンジ。瑞々しく切ない歌声。心地いいリズム。それからしばらくの間、僕の生活のBGMは「ZIGGY STARDUST」一色になった。何度聴いても飽きないどころか、じわじわと体に染みこんで、まるで中毒のようだった。こんな感覚は久しぶりだ。

こうなると他のアルバムも聴きたくなるのが性というもの。ひとつ前の「HUNKY DORY」、そして「THE MAN SOLD THE WORLD」「SPACE ODDITY」と遡っていく(いい中古盤がなかなか見つからなかったので、海外のショップにネット注文して取り寄せた)。どのアルバムも美しかった。そして心地よかった。特に「HUNKY DORY」は「ZIGGY」と同様、僕の胸の奥の方にある琴線をやさしく、激しく刺激する一枚。聴いているとなぜか涙が出そうになる。購入から数ヶ月が過ぎたいまもかなりのヘビーローテーションである。

*   *   *

しかし「ZIGGY」後のアルバムとなると、これは一朝一夕にはいかない。ざっと数えて22枚。しかも前述のように80年代のデビッドボウイは初期とは全く違う。僕が好きなボウイはいったいどのあたりまでなのかとネットで試聴してみると、なんと次のアルバム「ALADDIN SANE」で、すでに大きく方向性が変わっていることが判明した。メロディも、アレンジも、歌い方も。「ZIGGY」で世界的なスターになったボウイはアメリカの、そして世界の音楽と文化に触れ、吸収し、時代とともに僕の好みとは違う方向へと進化していくのである。それはもちろん仕方のないことなのだが…あぁ、残念。

しかし試聴するうちに一枚、僕の心に響いたアルバムがあった。「THE NEXT DAY」。ツアー中に倒れて以来、約10年もの間音楽活動を休止していたボウイが、2013年、66歳の誕生日に突然発表した最新アルバムだ。もちろん初期のアルバムのようなシンプルな音楽ではない。でも何か同じものを感じる。なんだろう?AmazonにLP+CDで2,039円というありがたい商品があったので、迷わず注文した。

140207_the next day

届いたアルバムは……素晴らしいの一言だった。
美しくて、瑞々しくて、切なくて、心地いい。

還暦を迎えたからだろうか、死を身近に感じた影響もあったのだろうか、原点回帰なんていう言い方は少々陳腐だが、何か純粋なものが全編を通して伝わってくる気がする。これまでの彼はたぶん、やっきになって新しい音楽をめざしてきた。世界中の人々を驚かせ、喜ばせる作品を作り続けてきた。しかしこのアルバムは、そんな40年間の世界一周旅行を終えた彼が、ひと息ついて自分を省みたような、久しぶりに自分の家に帰って、じっくりと音楽を見つめなおしたような、そんなふうに作られた感じがするのだ。まだデビッドボウイのことを半分も知らない僕が、ただなんとなく感じた印象ではあるけれど。

そして改めて思う。なんて歌の上手い人なんだと。収録曲「WHERE ARE WE NOW?」のPVを初めて見たのは、このアルバムが発売されてすぐ、「ZIGGY」を聴くより前のことだったが、実はそのときには(なんだか声がおじいさんになったなぁ、でもおじいさんになってもカッコイイなぁ)などと思っていた。ポールマッカートニーやエルトンジョンと同じように、ボウイもやはり年齢には逆らえなかったんだなぁと。でもそれは全くの見当違いだった。このアルバムで彼が聴かせてくれるのは、「ZIGGY」と同じピュアでストレートなヴォーカル。そしてシャウト。曲によって声を自在に操るテクニックと表現力。あざとさを感じさせない演技力。66歳の彼がたどり着いた、歌い手の悟りの境地。それが「THE NEXT DAY」の一番の魅力なのかもしれない。

*   *   *

「THE NEXT DAY」を聴いて、いままで敬遠していたボウイも聴いてみたくなった。とりあえずは「LODGER」あたりか、思い切って「LET'S DANCE」を聴いてみるか、それとも「REALITY」から順に遡るか…。デビッドボウイ信者への道のりはビートルズ以上に遠い。いまこそケイジさんに教えを請うことができたらと思うのだが、学校を卒業してからはすっかり連絡が途絶えてしまった。いまどこでどうしているんだろう。ケイジさん、もしもこのブログ見たら、どうかご一報ください m(_ _)m


  

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